2014年11月10日月曜日

回想録3

「大物を釣るコツは何ですか?」とたまに聞かれる。そんな時は当たり前の言葉だが「諦めないことですね」と答える。しかし、この「諦めない」ということが意外と一番難しい。やはり、なかなか掛からない魚だから思うような釣りにならないと雑になってしまう。この状態を私は『なんか釣れろ状態』と呼んでいる。私も集中力がきれてしまうと時として雑になり、なんか釣れろ状態に突入してしまう時がある。この状態に入ってしまって釣れたためしがない。そんな時は、一度竿を置いてイメージをする。・・・仕掛けをながし、ここでこうアタリがでる・・川面を見ながらイメージすると意外とすんなりモチベーションが戻る。大物釣りは「今日はダメだな」と感じてからが勝負だ。

2004年5月山梨本流
その日は早朝から全く奮わない釣りだった。大物が居そうな大場所でさえ小ヤマメのアタリしか出ず、区間によってはアタリすら出ないような状態だった。日は完全に昇り、私の頭上に達しようとしている。「今日はダメなのかな?」とつぶやいだが、大物が釣れるこの激戦区ではもうひとひねりが必要なのは分っていた。
そこで選んだポイントが波打つような荒瀬が長くつづく場所。底石がいくつか点在してはいるが、とても魚が着いているとは想像し難いようなポイントである。そしていざ流していくと、どうにも流れの押しが強くオモリの調整にやや苦労する。その最中に不意にアタリが出た。

「居たな、見つけた」

速い流れの一瞬のアタリだったので敢えて合わせず、次の一投に勝負をかける。そして目印がアタリの出た辺りに差し掛かった時に少しだけ仕掛けを送り込む。すると『分っていないと分らないようなアタリ』がでた。すかさず合わせをいれる。ここでいう『すかさず』とは、ひとの反射神経の限界は0.2秒と言われる事に挑むつもりで合わせた『すかさず』だった。
ある程度、掛けてからのやり取りを考慮しての立ち位置だったのだが、掛けた魚はビックリローリングをせず、まるで分っていたかの様に頭を下流に向けて走り出した。元竿を絞って溜めに入るが、押しの強い流れだったでの止めることが出来ず、溜めながら走らされることを強いられた。しかし、しっかり絞り込んでいたので、走ることが困難だと感じた魚はローリングをし始めた。「思う壺」と言いたいところだったのだが、このポイントは手前の流れが一番きつい。つまり、竿を返して手前に寄せて主導権を握ることが難しい流れだ。仕方なく上竿のまま序々に下ってついていき、幸い川原の広い所だったので後ろに下がって寄せに入る。流れの芯を通す時は半端ないプレッシャーを感じだが、上手くいったようだ。

小さな流れの横に寄せて近づいていくと、銀鱗まぶしいグラマーな体躯のヤマメが横たわっていた。